自然食づくり
自分の手で収穫したものをいただくことは、何にも変えがたい喜びです。そして、昔からその収穫物を保存するためにその風土にあったやり方でさまざまな保存方法が編み出されてきました。中でも、日本の風土は微生物が発生しやすく、3,000種類以上の発酵食品を生み出してきたといわれています。 自然の働きを生かし、丹精こめて手間ひまかけて仕込み、あとは自然の営みにまかせ、出来上がりを想像しながら楽しみに待ち、そして出来上がった自分だけの独自作をいただくことは、この上ない最高のぜいたくです。ここでは、その中の一例をご紹介いたします。
米の加工食品
日本人の主食となる米。そのまま炊いていただく他、さまざまな加工品としていただくことができます。また米のでんぷん質を利用した発酵食品を作ることもできます。






*写真左から、収穫したこしひかり、収穫した古代米(赤・黒)、玄米もち、古代米めん、玄米もち甘酒・赤米甘酒、黒米甘酒
●玄米あめづくり
玄米をおかゆ状に炊き、60度くらいに冷ましたら、米の重さの1割程度の麦芽を入れ混ぜ、よくかき回し55~60度くらいで6~8時間発酵させた後さらしなどで漉して絞り、殺菌のために絞り汁を煮沸した後、一晩置き、上澄み液をもう一度漉してあめ状になるまで煮詰めます。
米あめは麦芽糖の働きで、米のでんぷんから甘みをひきだすものです。気を使いながら1日半かけてゆったりと少量つくった米あめは上品でやさしい格別の甘さです。麦芽を使ったあめづくりはでんぷん質を多く含む雑穀類やいも類などでも同様にして出来ます。



*写真左から、発酵前、煮詰め作業、出来上がった米あめ(こしひかり、もち米、赤米、黒米)
麦の加工食品
麦には大麦、小麦、はと麦、ライ麦などがありますが、一番なじみ深いのは小麦です。パンや麺、菓子などの原料として使われます。
●小麦粉づくり



小麦は硬い殻がついていてそのまま食べにくいため、押し麦や粉にしていただくことが多いです。粉にすることで加工がしやすくなり、さまざまな料理に使われます。 粉にする際は、石臼などで粉にします(写真は、水車を利用したもの)。殻の部分をふすまといいますが、この中にはさまざまな栄養分が含まれています。ふすま入りの小麦粉を全粒粉といい、精製されたものに比べ深い味わいがします。 挽きたての小麦を使った料理は、粉のほんのり甘い風味がします。
●麦芽づくり



米あめをつくる時に、麦芽を使います。麦芽は麦もやしともいいます。麦を3日くらい水につけた後、むしろなどの上で発芽させ、芽が2~3mmくらいになったらよく乾燥させ、粉にします。麦芽が発芽するときに出すさまざまな酵素の働きによって、米やいもなどのでんぷん質が糖化されます。
大豆の加工食品
大豆は畑の肉いわれるほど良質の植物性たんぱくを含み、味噌、醤油、納豆などの発酵食品、油、きなこ、豆腐、豆乳、湯葉、もやしなどさまざまな方法で加工されてきました。 大豆の中でも黒大豆は、大豆より陰性な分抗酸化力が強く、薬効が高いといわれています。
●味噌づくり



大豆と、麹と海塩を使って作る味噌。味噌は、大豆の陰性さに、さらに発酵と言う陰の力を加え、そこに塩や時間という陽性な力を加えた日本人には欠かせない調味料。 大きな陰と陽の力をあわせ持ち、造血作用や体を温め内臓を強化する作用(陽性の力)を持ち、疲労回復(陰陽両方の力)に効き目があると言われています。 味噌に含まれる酵母や乳酸菌は、腸内の善玉菌を増やす作用もあるといわれ、日本人の腸には、乳製品より日本に古来から伝わる発酵食品のほうがあってるそうです。 無添加で熟成させた味噌は、そのままご飯やおむすびにつけて食べても、お湯で溶いて味噌汁にしてもおいしい、手軽に使えて栄養豊富な優れものです。
●その他の大豆加工食品



*写真左から、豆乳、納豆、黒大豆納豆
梅の加工食品
梅雨という言葉があるように、日本人のその時期の風景として、存在する梅。梅の独特の酸味は、さまざまな有機酸を含み、強力な殺菌効果があるといわれ、梅干しはじめ食薬としてさまざまに加工され使われます。
●梅干づくり



漬物といえば、梅干しをまず思い浮かべるようにそして、日本人と切っても切り離せない梅干し。太陽の陽性の力をふんだんに浴び、塩気と酸味のきいた梅干し。昔から、「朝の梅干しはその日の難のがれ」といわれるように私たちの食卓に欠かせない一品です。
●その他の梅加工食品



*写真左から、梅醤油、梅肉エキス、梅干しの黒焼き
野菜・いも・きのこの加工食品
さまざまな野菜は、ビタミンやミネラル、酵素などを含み、主食の栄養を補う副食として食卓に欠かせない、重要な食品として、さまざまな保存方法が生み出されてきましたが、中でも漬物はその土地土地でさまざまな漬け方があり、日本の風土における食文化の象徴となっています。
●干し野菜・干しいも









太陽の陽性の力をふんだんに浴びた干し野菜や干しいもは、ビタミンDが増し、少しの時間干しただけでも甘味が増します。天気のいい日に手軽に出来る一品です。
特にでんぷん質の多い玉豊という品種を、寒風という陰性さにあてて干した干しいもは火でサッとあぶっていただくととても甘くおやつに最適の絶品です。また、野菜の栄養をそのまま取り込める漬物も手軽に出来ます。自然薯パウダーはそばにやうどんつくりやお菓子づくりに使います。
*写真上左から、ブロッコリーの天日干し、人参の天日干し、切干大根
*写真中左から、根菜の天日干し、干しいも、干し自然薯
*写真下左から、エシャレットの醤油漬け、蕪の浅漬け、自然薯パウダー
●干し椎茸



日陰で育つ陰性な椎茸に、太陽の陽性な力が加わった干し椎茸。天日干しによってビタミンDが加わり、だし汁や煮物に使うと旨味が増し、また食薬に使ったりとさまざまに活用されます。